アーツ前橋

地域アートプロジェクト

結果発表!群馬県ゆかりのアーティストによる滞在制作事業

 アーツ前橋では、昨年度に引き続き、前橋市で滞在制作を行いたい、群馬県にゆかりのあるアーティストを募集しました。今年度は、県内外、国内外から12件の応募がありました。ご応募いただき、誠にありがとうございました。 
 8月18日に審査員4名で、厳正な審議を行った結果、群馬県出身で現在は東京で活動している梅沢英樹氏を招聘アーティストとして決定しました。梅沢氏は、2016年12月の1ヶ月間、前橋で滞在制作を行います。

■審査概要
応募期間:2016年7月11日(月)~8月5日(金)※当日消印有効
応募件数:12件
審査員 :岡部あおみ(美術評論家/パリ日本文化会館展示部門アーティスティックディレクター)
      白川昌生(アーティスト)
      田中龍也(群馬県立近代美術館 学芸員)
      住友文彦(アーツ前橋 館長)

■  審査結果
招聘アーティスト
梅沢英樹 UMEZAWA Hideki

招聘期間
2016年12月1日(木)〜27日(火) ※予定
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1986年群馬県生まれ、東京都在住。東京藝術大学大学院美術研究科在籍。国内外より電子音楽作品のリリースやインスタレーションの制作/発表、サウンド・パフォーマンスを行う。2015年はフランス、マレーシアにて作品を公演。主な受賞暦にリュック・フェラーリ国際コンクール/プレスク・リヤン賞受賞(2015年)。Contemporary Computer Music Concert 2015 ACSM116賞受賞。これまでの展示に『0℃』(blanClass、2016年) など。

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《acousimulacre》、2015

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《sea_variations》、2016

■  審査員からの講評

岡部あおみ(美術評論家/パリ日本文化会館展示部門アーティスティックディレクター)
 今年はナムジュン・パイク没後10周年、長期の展覧会が東京で開催されている。パイクはシェーンベルクを東大で研究した現代音楽の学徒だったが、欧米や日本の先鋭な芸術家との出会いを経て、パフォーマンスやヴィデオ・インスタレーションの傑作を遺し、グローバル社会に希望を託した。
 梅沢英樹氏が応募の際に提出したシャープな音の作品には、マレーシアの下水音がリミックスされていた。地元の桐生市で機織機の音を録音した作品もあるという。ローカルな立脚点が、グローバルな地平を突き抜けることもある。コラボレーションをよく手がける梅沢氏には、前橋のレジデンスの機会に、音だけではなく、サウンド・インスタレーションに新たな風を吹き込んでいただけることを期待している。

白川昌生(アーティスト)
 今回の募集に来た作家は、30〜45歳の作家が全体の8割をしめていた。そして書、絵画、彫刻、パフォーマンス、サウンドなどなどのさまざまなジャンルから作品がでていた。すでに自分のスタイルを確立させてきている世代が中心であったこともあり、質の高いレベルでの選択になった。作品そのものだけでなく前橋に滞在することで、作家そして前橋にとってもプラスになるであろうと期待できる要素も付加して、作品の選択を考えることにした。

田中龍也(群馬県立近代美術館 学芸員)
 今回選ばれた梅沢英樹さんは、音によって人々の記憶をとらえ風景を可視化する活動を展開している作家です。幼い頃から縁のある前橋の街や自然の中で、どのような音を拾い集め、サウンド・インスタレーションとしてまとめ上げるのか、期待されます。
 今回の応募者は、数こそ前回に比べ減りましたが、絵画、パフォーマンスから染色、書まで、多様な分野でそれぞれの表現の軸をしっかり確立している作家ばかりでした。そんな中で審査のポイントとなったのは、応募者にとってこのレジデンスが持つ意味です。今後応募する皆さんには、キャリアの長短にかかわらず、この機会をどう活用し、作家としてのステップアップにつなげるか、明確な目的意識を持ってもらいたいと思います。

住友文彦(アーツ前橋 館長)
 昨年に続き2回目の地域ゆかりアーティスト向けの滞在制作事業ですが、審査は各地で活躍するアーティストのことを知るよい機会にもなっています。前回の萩原さんと比べるとさらに若い世代のアーティストになる今年度は、フィールドワークや音を使う点がこの地域と関わるうえでユニークに感じられ、審査会で梅沢さんに期待が集まったと思います。物質を扱うのとは違う表現への関心は若いアーティストにも増えているように感じますので楽しみにしています。
 アーツ前橋の作品制作の支援は、今後一層ジャンルや世代を広げていきたいと思っていますので、ぜひご期待ください。

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