結果発表!群馬県ゆかりのアーティストによる滞在制作事業
アーツ前橋では、前橋市で滞在制作を行いたい、群馬県にゆかりのあるアーティストを募集した結果、県内外、国内外から28件の応募がありました。ご応募いただき、誠にありがとうございました。11月20日に審査員及びアーツ前橋で、厳正な審議を行った結果、萩原留美子氏を招聘アーティストとして決定しました。萩原氏は、2016年2月から3月にかけて約30日間前橋で滞在制作を行います。
■審査概要
応募期間:2015年10月5日(月)~11月10日(火)
応募件数:28件
審査員:岡部あおみ(美術評論家/キュレーター)
白川昌生(アーティスト)
田中龍也(群馬県立近代美術館 学芸員)
※アーツ前橋の代表として、館長の住友文彦も審査に参加した。
■ 審査結果
招聘アーティスト
萩原留美子 HAGIWARA Rumiko
1999年高崎経済大学附属高等学校美術コース卒業。2004年東京造形大学卒業。萩原の制作行為は、日常生活の範囲内で、ありふれた物事や不合理をあえて強調することや、偶然的に遭遇した物事を素材にすることによって構成されている。これらの日常への介入行為は、多様なフォーマット、写真、ビデオ、サイトスペシフィックインスタレーションなどに記録されることによって作品化され、微妙な、そして時に遊び心のある詩的表現へ変換される。
アムステルダムのライクスアカデミー(2008〜2009年)、トーキョーワンダーサイト(2012年)、AIRアントワープ(2013年)などのアーティスト・イン・レジデンスプログラムに参加。現在もアムステルダムを拠点に活動している。
招聘期間:2016年2月〜3月の約30日間(現在アーティストと調整中です)
《Ons stone / Two stones》 2013年
■ 審査員及びアーツ前橋コメント
岡部あおみ(美術評論家/キュレーター)
「群馬県ゆかり」の応募者の中で、出身在住者以外に多かったのは、2007年に開始した中之条ビエンナーレの参加者だった。群馬青年ビエンナーレの入選者なども含めて、今後のアーツ前橋のレジデンス活動が内外のネットワークの拠点になるといいと思う。審査員の一致で選ばれた萩原留美子はオランダ在住、ささやかな日常の佇まいや視線を静謐でコンセプチュアルな作品に構成する。コミュニティとのユニークな活動が展開するオランダの状況を知る機会にもなり、前橋の作家たちの刺激になるだろう。海外での経験が長い萩原にとっては、故郷の美と人々の暖かさを心ゆくまで堪能できる豊かな思索と充実した制作の時間が、新たな作品へと結実するよう願っている。
白川 昌生(アーティスト)
応募作品には年齢、ジャンルにおいてかなりの広がりがあり、美術以外のジャンルの可能性も考えさせられた。また美術の応募においても恊働、グループ制作もあれば、映像などもあり、絵画、彫刻という領域ではない作品もあり、前橋の滞在制作の実現がどうなるのかを考えてみた。また、若い世代の作家の可能性にかける場としての滞在制作、すでに確立されたスタイルをもつ作家への活動の可能性など、、一人しか選べないことでなかなか難しかった。
田中龍也(群馬県立近代美術館 学芸員)
審査では、応募者のこれまでの活動内容はもちろんですが、あえて「前橋」で滞在制作することに何を求めるのか、またそれが地域やそこに暮らす人々に何をもたらすのか、という点に着目しました。選ばれた萩原留美子は10年近くヨーロッパに拠点を置いて制作を続けており、地元のアーティストたちとの交流が、お互いによい刺激となることが期待されます。
一方で、前橋をはじめとした群馬県内で活動する応募者からも、制作場所や、今の自分を突き破るきっかけを求める切実な声を聞きました。今回招聘されるのは1人ということでしたが、今後はアーティストへのより幅広いサポートも含め、本事業が継続されることを願います。
住友文彦(アーツ前橋 館長)
アーツ前橋は、芸術家への支援として制作環境の提供を重要なものと考え、滞在制作事業を行ってきました。今回は群馬県にゆかりのあるアーティストが、この機会になじみのある場所で作品制作を行う機会をつくる初めての試みです。
萩原さんは、ヨーロッパのアートシーンで長期間活動してきました。とくにオランダは若手芸術家の支援に熱心に取り組んでいる国ですので、そこで培った芸術家同士のネットワークや、日本とは異なる芸術と社会との関係が、前橋の芸術関係者とよい融合を見せてくれるのではないでしょうか。
今後も新しくリニューアルしたスペースを、芸術家の側から活発に使いこなす提案がどんどん出てくることにも期待しています。