近藤嘉男と憧れのヨーロッパ航路：アーツ前橋所蔵作品から【終了】

2019.02.02 - 2019.03.24

　アーツ前橋では、地域ゆかりの作家や当館事業に参加した作家の作品を収集しています。

　本展は、当館が所蔵する郷土の画家・近藤嘉男(1915-1979)の作品を一堂に会した展覧会です。近藤は生涯に5度のヨーロッパ外遊に赴きました。その日記や紀行文には、前橋で過ごす日常の苦悩と、それを忘れさせる欧州風物への感動が綴られています。本展では、近藤が記し遺したこの極私的なストーリーを補助線として、彼の画業を振り返ります。また、彼の写真やヨーロッパへの憧憬が詰まったスクラップブックなども併せて展示します。作品を中心にテキストや写真、印刷物が混然となったユニークな空間のなかで、近藤嘉男という一人の「人間」を多面的に紹介していきます。

　さらに本展では、近藤とは対照的な人生を歩んだ二人の画家・高畑早苗と南城一夫の作品も併せて展示します。前橋に暮らしながら海外を旅した近藤と、前橋に生まれながら海外で生活した高畑と南城。海の向こうと関わりながら生み出された複数の表現が呼応し合い、それぞれの個性が浮かび上がります。

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会期：2019年2月2日（土）― 2019年3月24日（日）

開館時間：11時～19時（入場は18時30分まで）

休館日：水曜日

観覧料：無料

会場：アーツ前橋ギャラリー１
出品作家：近藤こんどう嘉男よしお、高畑たかはた早苗さなえ、南城なんじょう一夫かずお

近藤嘉男《港のマリア》1950年　アーツ前橋蔵

近藤嘉男《オンフルール》1970年　アーツ前橋蔵

近藤嘉男《分有の鳥》1974年　アーツ前橋蔵

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本展の見どころ

① 戦後間もない時期の名作から、晩年の色彩豊かな大作まで一挙公開　

近藤嘉男は社会や人間の内面を鋭く批評する画風が評価され、戦後間もない日本画壇で注目されました。陰鬱とした戦後社会の一側面を描いた作品は、灰色を基調にした不穏な雰囲気をまとっています。しかし1964年にヨーロッパを初めて見聞して以来、近藤の作風は一転。ヨーロッパや日本の風物を色鮮やかに、写実的に描くようになりました。この変化の背後には何があったのか。日記に書かれた一文、旅行の記録写真、制作のアイデアを集積したスクラップブックなどの資料と作品を同時に見ていくことで、作品の背後にある近藤自身の心の抑揚が伝わってきます。

②海なし前橋と海の向こう：渡欧にまつわるエトセトラ

近藤の画業を振り返るにあたり、本展では近藤のヨーロッパ渡航に注目します。近藤は生涯5度にわたりヨーロッパ各地に長期滞在しました。その旅程で書かれた手記には、旅先での歓喜や日本での苦悩が切々とつづられています。手記に遺されたストーリーをたどりながら、作品をいくつもの異なる視点から鑑賞します。

前橋を拠点に海外を旅した近藤とは対照的に、長らく海外で生活した前橋生まれの作家・高畑早苗と南城一夫の作品も同時に展示します。渡航経験はまさに三者三様。その時々の社会状況、家族やお金にまつわる個人的なドラマ、海外で何を見聞きし何を描いたのか。三人の経験を追体験するように、それぞれの作品を鑑賞します。

③ 高畑早苗《危険と歓楽の夜》(1982年制作)を初公開

本作は、2017年度にアメリカ人コレクターの遺族から寄贈を受けた作品です。高畑は1959年に前橋で生まれ、18歳で単身渡欧。その後パリからニューヨークへと活動拠点を移しました（現在は東京拠点）。「非白人・女性」というマイノリティとしての社会的立場を引き受けながら、強く生きる女性の姿を一貫して描き続けています。

高畑早苗《危険と歓楽の夜》1983年　アーツ前橋蔵

高畑早苗《危険と歓楽の夜》1982年　アーツ前橋蔵

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