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館長挨拶

私は美術館のあり方として次のようなことを夢想しています。

子供から大人まで、誰もが気楽に足を運べる場であり、
そこでは、視覚やいろいろな感覚にとって大なる喜びがあり、
創造的なことを楽しみ、その魅力を存分に味わい、
展示されているものを見ると、自然と「見る力」がつき、その「見る力」によってさらに見ようという意欲が増し、それがまた「見る力」を高めるという、渦を描きながら上昇していく運動が来館者ひとりひとりの中に生じ、
アジール、つまり、日本語では無縁所や自由領域と訳されるところに居るかのように、自分の社会的な立場や地位をいったん括弧に入れ、なにものにも縛られることなく、森羅万象について深く掘り下げて考えることができ、
自分の世界に磨きをかけたり、それを高めたりするのはもちろんのこと、自分にとって異質なものであっても、自分の中に取り込めるように促してくれて、それらによって自分の世界が広がり、
結果、日々の生活の中で、最も広い意味で創造的なことを行おうという気持ちになる、
そのような場です。

そして、このような美術館像は、おそらく、当館の特別館長をはじめ、多くの美術館関係者が望んでいることであろうと信じています。

ただ、このような夢想と、私ができることのあいだには大きなギャップがあります。私は私ができるささやかなことを行うだけです。それは、大まかには、作家や関係者と協議し、協力を仰ぎ、活動の中身をよくすることでしょう。でも、ここではとくに次の2点を強調したいと思います。

ひとつは、自分をひとりの観客の身に置いて、この美術館とその活動を観察し、そこに、来館された方々のご意見も参考にして、その観点から美術館がなすべきことを考えること。

もうひとつは、美術館の優秀なスタッフがその能力を最大限に発揮できるように環境を整えること。そして、なににもまして望むのは、上で夢想したような美術館の楽しみと魅力を、スタッフ自身が仕事を通して味わい、それらを伝えることに自ずと喜びを覚えるようになってもらうことです。

最後に、私自身の態度についてですが、美術館を運営するのが容易でないこの時代にあっても、美術館の可能性を信じ続けようと思います。

みなさんが様々な美術に興味を持ち、美術館に足を運ばれることを心より願っています。

2023年8月
アーツ前橋館長
出原 均

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