WS(8) いきいきサロンWS


日時=2018年1月16[火] 13:00~15:00
会場=南橘団地第二集会室
対象=南橘町にお住いの高齢者
持ち物=ハサミ、のり、いらなくなった青い紙、黄色い紙
参加費=無料
企画=中島佑太
主催=南橘町自治会
サポートスタッフ=小田(アーツ前橋)、後沢直子(南橘団地元民生委員)

参加者数=30

ワークショップの内容

南橘町いきいきサロンにお呼ばれし、高齢者向けの講話風ワークショップを行った。前半は活動紹介をかねて作品などの画像を使って、対話型鑑賞風に普段なかなか見ることのないアートについてお話しした。後半は持ち寄ってもらった不要な青い紙、黄色い紙を使って、次回予定されている南橘公民館で小学生が使う材料づくりと、その材料を使って「お弁当」をデザインするワークショップを行った。

  

アーティストの言葉

このワークショップの依頼が来たのは1年くらい前のことだった。2017年の年末にスケジュールを見て思い出し、それまで音沙汰のないこのワークショップは本当に予定されているのか不安になり、あわててアーツ前橋から問い合わせてもらったが、しれっと打ち合わせの予定が返ってきた。

依頼してくれたのは、昨年度のリサーチ段階から、ワークショップの実施まで、私たちのプロジェクトを地元側から支えてくださった元民生委員の女性である。彼女は元々教員として働いていて、強い正義感を持って地域に献身している方だ。2016年夏の展覧会に向けて活動していた準備期間、何度か彼女の考え方とぶつかることがあった。南橘団地に突如現れた美術館とアーティストを手放しで受け入れてくれる方なんてそうそういないだろうし、それは自然な反応だったと思うけれど、こうして必要感のある形で関われるようになったと思うと、感慨深いものがある。

アーツ前橋からアーティストがやってくる

アーツ前橋からアーティストがやってくる。

これは地元の方がつけていたタイトルだ。僕は正確に言えばアーツ前橋に所属するアーティストではないのだけど、アーツ前橋のアウトリーチ活動の一環でもあるから、派遣元と捉えれば間違ってはいないだろう。
僕は幼稚園を卒業する時までこの南橘団地に住んでいた。このワークショップに参加してくださった方々の中にも、当時から団地に住んでいた方もいるし、当時の僕を覚えてくれている人もいて、このサロンのサポートスタッフとして活動していたりする。さらにこれは最後に知ったことだけど、サポートスタッフさんの中には中学校時代の同級生の親御さんが2人もいた…。という感じでこの南橘団地というのは、幼稚園・中学校時代を過ごした超地元なのである。つまり「アーツ前橋からアーティストがやってくる」というタイトルは、逆輸入ということでもある。

 

講話風ワークショップ?

このサロンは毎月行われている。過去の内容のラインナップを見せてもらった中に、講話というのがいくつかあった。高齢者向けのワークショップは過去にも何度かやったことがあるが、どのようになるのか想像つきにくく、正直不安があった。そこで、半分は南橘団地での活動の報告を交えた構成にし、活動を知ってもらいがてら鑑賞を楽しんでもらう構成にした。講話が何かはよく分からないけれども、自称講話仕立ての対話型鑑賞ワークショップというイメージで進めてみたけれど、参加してくれたおばあちゃんたちがノリがよくて、対話型鑑賞もそれっぽく進んだ。

 

お弁当をデザインする

参加者一人一人が制作を通じて表現の自由さや楽しさを感じてくれたり、アートのようなよく分からないものと対話する時間を楽しんでくれたらいい。とはいえ自由になんでもつくっていいよ、と言ってもなかなか理想通りには進まないことが多い。そこでテーマが必要になるのだろうけど、「○○をつくりましょう!」と言うのは個人的にあまり好きなことではない。

2016年に同じ場所で行ったワークショップ《雲をつかむ》では、近年僕が継続的に取り組んでいる雲をつかんでいるような写真を撮影するワークショップを行った。その時に散らかした材料を拾い集めながら台紙に貼り、最終的にお弁当に見立てていく、という内容のワークショップを行った。今回依頼してくださった方がそれを覚えていてくださり、お弁当を今回もつくることになった。

団地に住む高齢者の方々は、一人暮らしも多い。最近では、お弁当をつくって外に出かけるということがないと聞いた。持ち寄ってもらった廃材を切り出し、子どもたちが使う材料につくりかえながら、当時つくっていたお弁当を思い返して談笑をする。旦那さんにつくってあげた愛妻弁当かどうかは分からないけれど、こんなお弁当をもらったらドキッとしちゃうね。

雲をつかむような話

前述の雲をつかんでいるような写真を撮影するワークショップを南橘団地で行うのは2回目だ。自分がまるで雲をつかんでいるように見える写真を撮影し、プリントアウトして持ち帰ってもらう。この持ち帰ってもらった写真のことが、たまに話題になる。桃川小学校でのアーティスト・イン・スクールで再会した子どもが、おうちに飾ってくれていると教えてくれたり、お弁当同様にまたこれをやってほしいと言われたりする。アートはよく分からないものだ、とよく言われるし僕もよく言う。アートを理解するだなんて、まさに雲をつかむような話だ、と言うところから、じゃあ実際につかんでみましょう、とよく分からないことをしながら、写真の仕組みを使って目に見えるものにしていく。よく分からなくてもいいんだよ、と言うメッセージを伝えたかったのだけれども、意外と分かりやすさとして伝わっているのかもしれない。

成果物をつくるワークショップはあまり好みではない。ただ飾るための成果物ではなくて、制作過程で様々な想像をかきたてたり、おうちに持ち帰ってからの生活の中で、ふと何かを思い出すきっかけになったりしてくれたらいいと常々思う。

この南橘団地プロジェクトは、1月のこのワークショップを皮切りに、計5回のワークショップを開催し、2017年度の活動を終えた。2017年度は、アーティスト・イン・スクール事業での活動を交えながら、南橘団地を含む桃川小学校エリアでの活動になった。2018年度の活動についてはまだ未定だけど、南橘団地に住む子どもたちを対象と限定するだけでなく、団地周辺に住み、行き交う人たちを巻き込んだ活動にしていきたい。新年度に向けて、2018年最初のワークショップが、地元の方からの依頼から生まれた、幅広い世代の人たちに向けた活動であったことをうれしく思う。

(執筆=中島佑太、撮影=木暮伸也、編集=今井朋)

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