美術部/松本力さんと絵巻物マシーン
(上記写真:滝沢達史)
年に数回、滝沢さんとアリスの広場のメンバーは、アーツ前橋の展示に行ったり、絵を描いたりする場をつくっている。
「アリス美術部」という名前で参加者に呼びかけ、メンバーは当日顔を出してくれたり、会いたいけど体調が優れず行けないなどのお返事をくれたりする。
お誘いのメールがコミュニケーションの場にもなっている。
アリスの広場の代表の佐藤さんやアリスの活動を支える方たちも参加して、ゆったりとした時間を過ごす。
今回は絵かきで映像・アニメーション作家の松本力(まつもと ちから)さんをお招き。
松本さんの「絵巻物マシーン」で、描いた絵をアニメーションにするワークショップを行った。
絵巻物マシーンはちょっと不思議な存在で、スーツケース、糸巻、書画カメラ、ランプ、戸の留め具、ビデオカメラなど、各パーツが本来の用途から解かれて、つながれている。
絵巻物マシーンで撮影されたコマたちは、どこかを迂回してあらわされた実感みたいなものをもって映像になる。
翌日放送した「まちほけチャンネル」で、VOQさんも理論ではなく迂回するイメージで楽曲を制作していると聞き、二人は似ている部分もあるのかなと思う。
(レポート記事 → 「切り株の可視化」)
幅8cmぐらいのレシート状の紙に、それぞれで絵を描く。それをつなげて絵巻物マシーンで一コマ一コマ撮影をする。
黙々とコマを描いたり、お茶を飲んだり、誰かの話に耳を傾けたり、松本さんの手元を見たり。
それぞれで描いたコマをつなげるため、松本さんが絵を描いてつなげることもあるし、他の人が描いたのに不思議とつながることもある。
最後に、薄闇のなか、自分が描いた絵のあとさきを、みんなでたどった。
「自分の森で迷子になりそう」
松本さんが自分の話をしている最中、何をしゃべっていたかわからなくなった時につぶやいた。
アリス美術部には、いつも人間らしい声掛けややりとりがある。そしてそれにこたえてみたい、返答したいと湧き上がる気持ちがある。
その気持ちが、水が流れる先を決めるように、たぶんこっちの方、このあたり、ここでこえで震わせてみたいと、
インクをにじませて、枝をのばす。
逡巡といさぎよさが、緩やかに連なる時間の空間。毎年少しずつ枝をのばしてきた森で、深く呼吸した。
(サムネイル及び一枚目の写真:滝沢達史、その他の写真、執筆:天羽絵莉子)
アリス美術部/「松本力さんと絵を描こう」
2022年2月12日(土)13:00~15:30
参加者10名(アリスの広場:若者3名、保護者1名、職員1名、ボランティア2名、アーツ前橋:3名)