アリス広場 若者の執筆(4)Mさん
「今年度を振り返って」
この記事を執筆している最中に、私は地元、群馬県を離れました。
地名、お店の名前、会話のイントネーションなど、懐かしさの中には、まだまだ新鮮さがあります。
この土地に来て、とても不思議に感じていることがあります。
それは、コイン精米に特別な思いを抱くことです。
地元に居た際、それに思い入れはないため、一過性のものかもしれません。
何かに心動かされた時、例えば、海を見た時の「わぁ、海だ~!」という高揚感と似たものを感じます。
「キーワードはコイン精米。さて、私は今どこにいるでしょう!」と問題を出したなら、正解は岡山県になります。
私は、ホハルという放課後等デイサービス業を行う施設で従事しています。
群馬で表現の森の活動を行なっている、アーティストの滝沢達史さんと出会ったことを縁に、このような職業に巡り合いました。
アリスの広場を初めて訪れた約5年前、自分がこのような仕事に就くとは思ってもみなかったことでしょう。
この5年間で、アリスの広場にも私にも、お互いに変化がありました。
アリスの広場は2019年頃から、セクシャルマイノリティ支援団体のハレルワと、まちのほけんしつでの活動を共にしてきました。
私は高校生、大学生、社会人と環境が変わってゆきました。
「場所や人は、完璧な連続が続くことによって成立している。」
そんなふうに、見えてしまうことが私にはあります。
私は完璧を求めるあまり、物事をよく初めの状態にしたくなることがありました。
幼い時からそうで、例えば、ゲームは一日やらない日があればリセット。
板書した文字やラインの引き方で気に入らない部分があれば、一から全て書きなおす。
これらは簡単に実行できました。しかし、簡単に実行できないこともありました。
例えば、それは自分が今まで生きてきた日々をやりなおしたり、消したりすることです。
過去形の表現が多いのは、今は、そのような行動や考えが少なくなっているからです。
移住して約1ヶ月、目の前のことに一生懸命になっているからでしょうか。
全力でする鬼ごっこ。子どもたちが教えてくれるジェイボードやスケートボードに挑戦。
「明日はあの子とどんな風に関われるだろう」
知らない道をドライブしたり、大好きな海がある環境。
「自分は何がしたいんだろう、何ができるんだろう」
自分に負けそうになったら、その日は全力で駆け抜け、ワクワクすること、楽しいことだけを考えて寝る。
「やめたり、やりなおすことの多かった私に、ホハルは続くだろうか」
そんなことをたまに考えます。
ふと、まちのほけんしつとの関係はなぜ途切れないのだろうと考えてみました。
アリスの広場とハレルワ。いろんな人の力になれる予定の場所を、ほぼ一からみんなで作り上げるという非日常的なできごと、そこで生まれる何気ない会話や沈黙。
学校に行けない一人の当事者だったこと、みんなで美術館や旅行に出かけたこと、手を動かしたこと。ここでの改修作業やまちほけチャンネルの運営、みんなで、一人で、この場所で過ごしたことは、単に大切な思い出を残しただけでなく、また行きたくなる場所、また会いたくなる人たちを、私はプレゼントしてもらいました。
毎日通い詰めた日々と、逆にそうでもない日々。
どちらかが優れているというわけでもありません。
「続くとは、必ずしも完璧が連続することではないのかもしれない。」
生まれた日、遊具から落ちた日、石灰で遊んで怒られた日、学校に行きたくないと口にした日、死んだ方がいいと考えた日、中退を決めた日、初めて飛行機から地球を見た日、卒業できた日、死にたかった日、仕事を辞めた日、少しだけ自信を持てた日、今日という日。
これまでの日々の、どんな日も、全部ぜんぶ、この瞬間の私に繋がっています。
私は今、生きるをすることが最高に楽しいし、おもしろいです。
今日は、どんな日にしようかな。
明日は、どんな日にしようかな。
死ぬまで、どんなふうに生きようかな。
(執筆・写真 M)