ゆったりアーツ7/岡本太郎と「今日の芸術」


不登校、引きこもりと呼ばれる若者と休館の美術館で作品を鑑賞する「ゆったりアーツ」。今回は岡本太郎である。太郎の知名度もあって動員数も多いと聞いているが、アリスの若者の関心も高い。太郎のパフォーマンスは人々の気持ちを高ぶらせ、言葉も痛快なので、アリスの若者も元気をもらえたらいいなと考えた。ゆったりアーツは通常は自由に鑑賞するプログラムだが、太郎は裏話もユニークなので、今回は担当学芸の若山さんの解説付きで回ることにした。この解説付きツアーが意外にも好評で、「自由に見た方が緊張しないのでは?」とのこれまでの配慮は、あっさり覆された。いつもながら僕の気遣いは彼らの気持ちと裏腹なことが多い。

美術部ではこれまで何度か絵も描いているので、改めて太郎の絵をどう思うかと聞いてみた。初めは萎縮していた彼らだが、「この絵なら描けるかもしれません」と本音が出たので、みんなで笑った。そして、「太郎さんが聞いたら喜ぶと思うよ」と話すと、絵を見る表情が和らいだ気がした。

では、「現代の表現においてこの絵のように、美しくもなく、価値にとらわれず、突き抜ける表現ってなんだと思う?」と聞いた後、「今、君たちとこうしていることが表現なのだ!」と、多少太郎風を意識して伝えると、全員がポカーンとしていた。芸術は時に不発である。

(執筆・投稿/滝沢達史)

 

 

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