ゆったりアウトドア Vol.4 赤城小沼のひきこ森


「ゆったりアウトドア」とは、アリスの若者たちと出かける小さな旅のことだが、開催は実に3年ぶりとなる。これまで「まちのほけんしつ」の改修やイベントなどが続いたので、しばらく開催ができなかったが、「まちほけ」も無事にオープンを迎えたので、久々の開催となった。コロナも徐々に落ち着きを見せたし、のんびりとした時間を心地よい場所で過ごしたいと思った。しかし、3年ぶりの開催で人は集まるのだろうか?そんな不安を他所に、新しい若者も参加して、12名という程よい人数が集まった。

内輪のことではあるが、ここ3年はアリスの新しい居場所作りや、ハレルワとの共同改修など、エネルギーが必要なイベントが多かった。だからここ最近、「何もせずに過ごす」という、アリスに出会った頃のような時間を過ごせていなかった。そんなこともあって、今回はただただのんびりと過ごしたかった。何より僕自身がのんびりしたかったのだ。疲れた心には、赤城小沼がより一層美しく見える。

この日は天候にも恵まれ、秋の心地よい陽気。人もまばらで、ほとんど貸切状態だ。そんな時でもアリスの集まりは、だいたいみんな緊張していて会話もあまり生まれない。口を開いてさらに緊張が深まるという感じのスタートである。「イベント企画してゴメンナサイ」最初はそんな気持ちになるが、でも、いつものようにただそこに居て、食事をして、のんびりしていると、自然と写真を撮り始めたり、石を投げたり、隣の人と会話が始まっていく。それでなんとなく小さな連帯感が生まれてくる。過度の緊張感からの弛緩なのか、この「ゆったり」と関係が生まれてくる感じがたまらないのだ。この日も「ゴメンナサイ」の気持ちは「よかった~」の気持ちに変わる。この心地よさはいつもながら、なんとも言えない。

小学生のNちゃんは、いつも会うと恥ずかしくてお母さんの陰に隠れているが、僕に会うのが嬉しいらしく毎度参加してくれる。この日は湖畔で石を一生懸命投げている。(最後の方は疲れてふてくされていた。笑)初めましてのメンバーも美術部の活動だけあって、みんな表現に関心が高い人が参加している。若いのに小津安二郎の話を熱く語るOさん。表現の深め方についてたくさん質問をくれるMさん。会話はせずに黙々と写真を撮り続けるMさんとAさん。会話の少ない二人が写真を見せ合っている様子がまた堪らない。また、湖畔に座って人生相談などでも話が弾むMさんとTさん。

そんな様子をただ、ぼーっと眺めていると本当に心地がよい。みんなが好きなように勝手にしていて、それでいて集団でいる。赤城小沼を眺めながら、「こういう自然な心地よさが生まれるのってなんだろう?」「この自然の景観も大事な要素かもね。」とアーツ学芸員の今井と話す。

人と人の間に心地よさを作る。その方法についてアプローチは様々あるものの、最近はその方法よりも、心地よさが生まれてしまう環境デザインについて考えている。自然と心がほぐれたり、会話をしたくなったり。秋晴れの赤城小沼のような居場所が作れたらいいのかな。風が湖畔に小さな波を作って木が揺れる。それをただ眺めていると、もう帰る時間だ。こんなオフィスがあったらいいな。

(執筆・写真:滝沢達史)

「ゆったりアウトドア Vol.4/赤城高原小沼散歩」

2021年9月22日(水)11:00~15:00

参加者12名(アリスの広場:若者7名、保護者1名、職員1名、アーツ前橋3名)

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