石坂亥士ブログより~えいめいでのセッションを終えて
えいめいでのプロジェクトをふりかえって石坂亥士さんのブログにレポートが掲載されましたので、転載いたします。
今年は、4月から初の試みに参加させていただき、試行錯誤を繰り返しつつ、新たな発見に、心弾ませている。
それは、「アーツ前橋」と「アートによる対話を考える実行委員会」主催で開催される、「表現の森」という展覧会だ。
副題には、「- 協働としてのアート -」とあるように、正直内容は分かりにくい。
アートというものの在り方は、様々ではあるものの、美術館という空間で何かを表現する場合、ある一定の方法論などがある様に思えるが、今回の展覧会は、その展示方法ですら、ご来場いただいた方々と現在進行形で、創造していけたらいいのではないか!?という感じすらあるのだ。
そんな中、ダンサーの山賀ざくろさんと自分が中心になり、アーツ前橋のキュレーターさん、コーディネーターさん、映像作家さんで、チームを組んで、なんとデイサービスえいめいで、ご老人を対象にワークショップを展開しいくというものだったのだ・・・・・。
そのプロジェクト名は、「RHYTHM 打!えいめい」。
元来の楽観主義の自分としては、気軽に引き受けたわけだが、子どもたちとのワークショップとは違って、老齢なわけで、ガンガン身体を動かしてもらうわけにもいかないし、人生の年輪を刻んだ先達でもあり、一筋縄ではいかない空気が漂うワークショップが始まっていったのだった。
4月から月二回のペースでのワークショップが始まり、暗中模索を繰り返していく。基本的には、即興演奏となんら変わることはないので、こちらの空気とご老人の空気が噛み合ない時間も、個人的には気にもならないのだが、映像作品に仕上げていく都合もあり、ミーティングを重ねつつ、問題点を吟味したりして、回を重ねていく。
自分の活動の中では、基本的に振り返りはしない、完全その場主義的やりっ放しスタイルなので、全てにおいて新鮮な刺激だ。振り返りというのは、なかなかに興味深いもんである。
この世に生まれて、完璧な状態から、人生というのは退化を繰り返して行く!という説もあるほどに、必要のない知識やエゴをはじめ、様々な経験から柔軟な精神からかけ離れて行く傾向がある様で、ご老人ともなると、それは巨木の様にそびえているわけなのである。
そんな状態ではあるのだが、民族楽器という触ったこともない音の出るものに対しては、興味をもって接していただけたようで、楽器を手に音を出していく事で、なにかしら身体の状態も民族楽器を受け入れる様になっていく様だった。
今回、あらためて感じさせられたのが、「素直さ」というものだ。子どもの頃には普通にできていた事が、大人になると自分の物差しでしか物事を見たり感じたりできなくなってしまうということがあるのだと思う。
そして、素直な方は、楽器の音に導かれる様に、どんどん音が変化して生き生きとしてくる。これは、自分自身に対しても、謙虚な状態をキープしていかなきゃいけないなあ、というメッセージのようにも思えた。
月二回で開催してきたワークショップも、昨日で大詰めとなり、RHYTHM 打!えいめい即興セッション大会となった次第。
結果から言えば、非常に良い感じに盛り上がりをみせ、その人その人の良い部分が光った時間になったと言える。
自分が大きな舵取りはしてはいるが、ざくろさんが受けもつ部分があったり、スタッフの方が良い感じにサポートに入ってくれたり、同時進行的に各自が良いタイミングでサポートしてくれ、今回の結果があった様に感じる。
一番感じた事は、各人の距離感というものだ。
今回の展覧会のテーマである「表現の森」とも、上手い具合にかぶる感じだが、森というのは、そこに生える木々のそれぞれの距離でできているということだ。巨木のすぐそばには他の木々は生えないように、自然のバランスでうまいこと森はできているというのに、似ている様に感じたのだ。
それが、各人の出す音と楽器の特性やバランスと、その楽器との相性などなど。その人やその楽器に合うもの同士がガッチっとはまった時に、奇跡の瞬間が訪れるのだ!
「RHYTHM 打!えいめい」即興セッション大会は、何度もその奇跡の瞬間を垣間見せてくれたのだった。
自分などは、その域にはまだまだだが、真似できない様なタイム感のリズムや、限りない静寂感の中で紡がれる旋律、そんな枯れて行く音の煌めきと美しさを聴かせてもらえた、もの凄く充実した時間となりました。
そんな展覧会がこれから始まりますので、ご興味ある方は是非!!!!
◎オープニングイベント
2016年7月24日(日)14時〜15時
会場:アーツ前橋 ギャラリー2
ライブあり、プチ体験ワークショップも!
詳細は以下のリンク、アーツ前橋のサイトにて!!!
http://www.artsmaebashi.jp/?p=7513