ゆったりアーツ5/横堀角次郎と仲間たち


なんか最近安定している

休日の美術館に出かける企画「ゆったりアーツ」も5回目の開催となる。今回は、「Art Meets菊池敏正・馬場恵」「横堀角次郎と仲間たち」に出かける。メインは近代絵画の展示で久しぶりに、いわゆる美術展らしい展示となる。これまで現代美術のちょっと変わった空間に触れてきた彼らは、「なんだか美術館みたい」と変な感想を言っては、その可笑しさに笑っていた。ゆったりアーツは導入のみ簡単な説明をするが、あとは勝手に鑑賞し、なんとなく終わるのがいつもの流れとなっている。今回は、通常の照明で鑑賞した後に照明を落とした空間を体験した。暗闇から絵画がほのかに浮かび上がる空間でじっと鑑賞する姿は特別な自分だけの体験を楽しんでいるようだった。

 

 

始まりは2年前の展覧会から

2016年3月から始まった「アリスの広場」との交流。はじめは展覧会づくりのために通い始めたが、しばらく通っていると、表現のネタ探しをしている自分が滑稽に見え、虚しさを覚えた。もちろんそのような態度を排して交流を試みるのだが、結局、腹の底はそういうことだ。展覧会はそんなもやもやとした感情も含めて、そのままを出すことにした。割りきってからは、ようやく無理のない関係が生まれたように思う。彼らに展示を助けてもらうことで自然な関係が生まれ、Yさんとのエピソード(かつて自殺しようとした場所に出かける)も、幸運に恵まれ、幸せな時間を体験させてもらった。展覧会までを振り返ると、危うい橋を渡るようなライブ感はとても刺激的だったが、今となっては怖さも覚える。

展覧会後は活動を拡大しようとしたが失墜した。その年はアリスの訪問とは別に、前橋と高崎の不登校サポートの現状もリサーチした。前橋ではどの団体も活動の歴史が浅くネットワークの弱さが課題であったため、横のつながりを生むシンポジウムを計画した。昨年の活動が個人に関わったことに対し、より社会に関わるアクティブな動きを意識したが、他団体との交渉や、行政との調整は僕自身の疲弊を生み、果たしてこれを美術で行うべきことなのかという疑問も日毎に増していった。この方向ではないかもしれない。もう一度、個人から考え直す事にした。

タナボタ

その頃偶然の出来事があり、今にも続くプログラムが生まれた。アリスの広場はスペースを間借りしているのだが、急遽使えない日があり、ちょうど休館日であったアーツ前橋に避難した。休館日の美術館は彼らにとって心地よい場所となり、休日の美術館の活用はユニークに思えた。その年は、美術館への外出も慣れてきたところで、さらに外泊旅行を企画した。外泊未経験の彼らが、緊張しながらも話す「行きたいです」と言う言葉に心を打たれ、結果、旅は大成功だったように思う。そして半年後の2018年春にも2回目の旅行に出かけた。 

アリスとの関わりも3年目となり、今年は何を目標にしようと考えている。メンバーは相変わらず少数で、あまり増えることもない。社会全体の問題を考えた時、受け入れの母体を広げたいと考えたこともあるが、自分には合ってなかったかもしれない。休日の美術館と旅行の企画はうまくいっているので、続けたいと思う。ほかに取り組みたいことがあるだろうかと考えた時、思い出されるのは、アリスに来なくなってしまったT君のことだ。T君とは一緒に化石を取りに行く約束を果たせないままでいる。今年はもう一度丁寧にアリスの一人一人と対話をして行きたい。新たに「相談室」という試みもはじめたので、まあ、今まで通りポツポツとやっていく。

(執筆・投稿 滝沢達史)

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